風が聴こえる
 涙目になりながら、ベッドから起き上がってくる。

・・・どうなってんだ?・・・

 俺は今の状況を冷静に判断しようと努めた。まず・・・・俺の名前は『啓』だ。でも少女は、俺のことを・・・『準くん』・・・・そう呼んだ。

・・・駄目だ。話がわかんねぇ・・・。

「会いたかった。・・・あの時、本当にごめんね。」

 そう言って彼女は俺に抱きつく。多分、会った事は無いと思いながらも、自分の記憶を必死に探る。

「ちょ・・。」

 何も言えずにいると病室の入り口から、中年の夫婦と看護師が一人入ってきた。

「あらぁ・・・・。」

 気の抜けた声を出して、中年夫婦は病室を去ろうとする。

「お邪魔だったみたいね・・・・」

「いや、全然お邪魔じゃないですっっ!!!!」

 大声で中年夫婦を引き止めて、いきなり抱きついてきたことを話すと、中年夫婦は顔を見合わせた。

「まぁ・・・そっくり・・・ねぇ?」
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