【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
『ん?どした?』
チーフが声に反応して
訊いて来た。
『あー!何でもない。
の、飲もう!
飲め!飲めば!飲む時!
飲まれる時!』
意味不明の五段活用を
言っちゃったじゃない!
『変なの…。
まっ、いいか。
そこの角、曲がった所に
俺の行きつけの店があるんだ。
そこで飲もう!』
麗子はしどろもどろに
なりながらコクンと頷いた。
ホワワ~ン♪
「失恋、たった2日目にして
別な殿方に想いを寄せるだ
なんて…不謹慎ザマス!」
『そんなんじゃないったら!』
今度は、風紀委員みたいな
麗子's天使のお出ましだ!
普通、天使と言えば
羽根があってキュートな姿を
想像させるだろうに。
団子にキッチリ纏めた髪に
鋭角なフレームの眼鏡まで
掛けてるよ。天使のクセに‥
PTAの役員か!
『なに?どうしたの?
あっ!もしかしてさっきの
乱闘で、どっかぶつけた?』
いきなりチーフが両手で
アタシの頬を包み込み
心配そうに真剣な眼差しで
見詰める…。
ドックン☆
慌ててチーフの体を押し戻し、
『何でもないの!
本っ当ーに大丈夫だから!
行こう!飲み行こう!』
『そう?』
ヒョイと肩を竦め小首を
かしげると、チーフは
ゆっくりと歩き始めた。
何だったのよ今の‥
ドックン☆て!