【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
この店では常連さん達が
それぞれウエスタンネーム
とか言うのを持っていて
それぞれが違った名前、
つまりあだ名で呼び合ってる
らしい。
チーフと麗子はコートを
脱ぐと、カウンターの
奥の座席に横に並んで座った。
『マスター、
テキーラ頼む!』
『おう!トニー珍しいな。
彼女か?』
『まあ、そんなトコ‥。』
そんなトコって!
聞いてませんよ!
いつから?
でも不思議と悪い気は
しなかった。
マスターがショットグラスと
テキーラのボトルを
次々とカウンターに滑らせる。
それぞれが見事にチーフの
目の前でピタリと止まった。
麗子はその様子を見て
目を丸くしていた。
『いいかい?麗子ちゃん、
まず、手の甲。
親指と人差し指の間の
此処に塩を置いて舐める。
で、一気にコレを流し込む‥。
それか、このレモンを
口の中に搾って、一気に
コレを流し込む。
やってみる?』
チーフがテキーラを
煽りながら飲み方を
伝授する。
『どっちにしても一気飲み?
じゃ、やってみる‥。』
見よう見真似で麗子も
やってみた。
『くあー!
チーフ、コレ効くねぇ。』
麗子がしかめっ面で
チーフを見た。
『プハハ!大丈夫か?
無理しない方が良いよ。
あっ!それからさ、お店
離れたんだからチーフって
呼ぶの辞めようよ。』