【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


暫くして麗子のアパートが
見えて来た。


『麗子ちゃん、着いたよ!
起きて!麗子ちゃん?』


麗子は全く起きようとしない。


『しょうがねぇな‥』


トニーは麗子を一旦
階段の縁に降ろすと、
息を吸い込み、中途半端な
小声で至近距離から彼女の
耳元に叫んだ。


『火ー事だ~!逃げろ~!
焼け死ぬぞ~!』


う、う~ん‥


寝ながら眉を潜め、
うなされている。


『起きねぇ~。

別に悪夢見せようと
してる訳じゃ‥
勘弁してくれよ。』


やむを得ず、トニーは
麗子の鞄を開けて、鍵を
探り始めた。


『トニー開けま~す!
鍵、探しま~す!』


一応、麗子に自分の行動を
実況する‥


鍵を見付けると、再び麗子を
担いで階段を登った。

部屋のドアを開け、
麗子の靴を玄関に落とすと、

『トニー、入りま~す!』


ここでも無言の許可を得る。


灯りをつけて、奥のベッドに
麗子を降ろすと、そのまま
部屋を後にしようとした。


『いや、待て!
メイクは落とさないと
肌に悪い。
クレンジング何処だよ‥』


職業柄、どうしてもメイク
したままの就寝は許せない。

ドレッサーの引き出しを
物色する‥


既に実況は止めていた。


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