【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
『見~付けた♪
けっこう良いクレンジング
使ってんじゃん。
12000円!!そんなにすんの?!
クレンジングだけで?
店のより高ぇよ!
何処のだよ‥聞いた事ねぇな‥
化粧水も全部統一してるけど
これ、どっかエステサロンで
ローンとか組んじゃったんじゃ
ないの?やべぇよ!
明日、説教してやろ‥』
そう言いながらも
キッチンでケトルに水を
注ぐと、コンロに掛けた。
クレンジングを手の平に
取り、眠る麗子の左の
こめかみからクルクルと
螺旋を描く様にのばして行く‥
ピィ――――――#
『やっべぇ!』
ケトルのホイッスルが
静まり返った部屋に
喧しい!
慌ててギトギトになった手を
持て余し、キッチンへ
駆け込みコンロの火を
止めた。
ついついケトルのホイッスル
部分を閉じていた。
振り返りベッドの麗子の
様子を伺ってみたが、それでも麗子は眠ったままだ。
『どんだけ?』
トニーが呆れる‥
そこら辺にあるボールに
お湯を注ぎ、水で割って
ぬるま湯を作る‥
ベッドサイドに戻り、
ティッシュで麗子の顔の
クレンジングを拭き取ると、
タオルをぬるま湯に浸し
それを軽く絞ると優しく
麗子の顔を拭っていった。
『あ~コザッパリ♪』
一通り作業を終えると
麗子に布団を掛け、
忍び足で部屋を出た。
『何か俺、泥棒みてぇだな‥』
鍵を掛けて、新聞受けの
間から鍵をヒョイと放り込むと
肩と首をほぐす様にぐるりと
回しながら去って行った。