【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


『誰か部屋に居たって事?』


咄嗟に唇に触れた手は
サラリとしていた。


『あれ?』


ふと思い当たり、自分の
顔中に触れてみるが
指にファンデーションは
付いて来ない。

『何で?』

急いでドレッサーの所へ
行くと鏡を覗いてみた。


『あれ?メイク・・・
!!!あっ!もしかして
チーフ?』


パズルのピースが合う様に
昨夜の謎が全て解けた!


『うわぁちゃあ~!
チーフが運んでくれたんだ!』


慌てて服に触れてみる‥

服も下着も異常は無い。


その足でバタバタと玄関に
向かってみた。


丁度、新聞受けの下に
部屋の鍵が落ちていた。

ドアにはちゃんと鍵も
かかってる。


一瞬でもチーフを疑った
自分が恥ずかしくなる。


麗子の自己嫌悪は更に
積み重なる‥


『アタシ最低~!』


この世の終わりの様な表情で
暫くその場にしゃがみ込み
呆然としていた。


『何かホントに熱出そう…』


気を取り直して再び
キッチンに向かうと、
今度こそ冷蔵庫の中の
ミネラルウォーターを
取り出そうとした。


冷蔵庫内の先頭に
一昨日作ったダージリン
ティーのシフォンケーキが
陣取っている。


それが麗子の気持ちに
とどめを刺した。


『ぬぅ…慎也のばかー!』


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