【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


何処を見ているのか
掴めない黒いサングラスを
掛けたまま頬杖をつく
麗子の姿は端から見てると
不機嫌そうにも見える。


案の定、ウエイトレスの
女の子が恐る恐るリゾットの
皿を置いて行った。


そんな事は全く気付いていない
麗子は、ここにトニーが
居たら‥

なんて妄想をし始めている。

もう頭の中はトニー
トニー、トニーで
すっかり満たされていた。


「もう、この子完全に
イッちゃってるわね?」


麗子's悪魔が珍しく
麗子's天使に語り掛けた。

「もうアタクシにも
止められそうにないわ‥」

天使がそれに返答する。

「てか、そもそも天使って
恋を応援する立場なんじゃ
ないの?

この間から不思議だったん
だけど‥

アンタ天使よね?
どうしても掟破りな
ふうにしか見えないのよね…」

悪魔が疑問を投げ掛ける。

「アタクシは何も反対と言う
訳ではないのよ‥。

ただねぇ‥」


天使が溜め息混じりに
言葉を止めた。



「ただ何よ?
まさかアンタ!
天使のクセにヤキモチ?
だからそんな姿に
なってんの?」


「アータ!なんてこと言うの!
アタクシは天使よ!
そんな事あるわけないじゃ
ないの!」


和んでいたと思ったら
やっぱりバトルに発展した。


だが、今回の会話は
麗子の耳には届いていない。


新たな恋が麗子を完全に
盲目にしているのだ。


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