【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


食事を済ませた麗子は
食後のコーヒーを飲みながら

BGMのボサノヴァに暫し
身を委ねていた。


やっと店内のお客に目を
向ける心の余裕も出来て来た。

さすがにこの時間、年配の
オバサンや、たぶん営業マン
ふうの男の人がちらほら
居る程度だ。


《みんなしっかり
働きたまえ!》


心の中で上から目線。


店の奥、流れる水の壁に
近い座席にも何気無く視線を
移した麗子は、一瞬
素通りした目線を急速に
一点に引き戻した。


男女が向かい合わせに
座ってる客の男の方に
照準が合わされた。


『常務…?』


たぶん間違い無い!


正面に座る二回りは年下に
見える若い女の子の手を
捏ねる様に触りまくってる。


奥さんじゃないよね?

どう見ても…。


『キモっ!』


え?!


今、財布から?
お金を出して…?


…渡したよ!!


諭吉5枚くらい…!


パトロン?援交?


ゲッ!!


麗子は、とっても見ては
イケナイものを目撃して
しまった!

あの普段、オフィスに
入って来ただけで威圧感のある

あの常務が、デレデレに
なって若いオネェちゃんの
手を捏ねくり回している…。


これは…事件ですょ!


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