【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


『き、君!
どこの興信所だね?
妻から、美津子から
頼まれたんだろう?

幾らだ?幾らで雇われた?
妻の倍出そう!
頼むっ!
妻には報告しないでくれ!

この通りだ!
とりあえず10万…

今は持ち合わせが無いが
後で必ず!必ず払う!
だから頼むっ!

美津子にだけはー!』

常務は完全に勘違いしていた。

麗子を奥さんが雇った
興信所の人間だと思い込んで
必死に拝み倒している。

よほど奥さんが怖いらしい。


だったらよせばいいのに…。

男って…ばか!


ホント、こんな事なら
慎也にもヴィトンとか
買わせてやれば良かった!

慰謝料だ!

なんて思う反面、男に
貢がせる度胸なんかない。

ストレートな恋愛しか
出来ないのが麗子である。


常務に握らされた諭吉
10枚を、オドオドしながら
持て余す。


『婿養子としてあの家に入り、
肩身の狭い思いをして
来たんだ!

あの窮屈な家で息が詰まり
そうな毎日で…

朝から晩まで働き詰めだ!
解るだろ?君にも…。
見逃してくれ!
な、な?それで旨いものでも
食べてくれ。
調査の経費も妻から
受け取るんだろう?

一挙両得じゃないか!
もし、妻に報告してみろ…
判るなっ?じゃあ!』


『あっ!常務…!』


行っちゃった…。


麗子の手には10万円が
残されていた。


後半は泣きおとしから
威圧に変わってたよ…。


こんな大金…


『こ、困るって…!』


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