【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
チーフに背中を支えられながら
ハリウッドミラーのある
座席まで連行される‥
チーフの魔法の手が
あっと言う間にメイクを
剥がし
泣き腫らした瞼には
温冷タオルが交互に
当てられた。
『いい?
今から泣いたら
承知しないからねっ!』
そう言いながら
クリームファンデを
のせて行く。
真剣な眼差しで
アイカラーにマスカラ、
ルージュ‥
みるみるアタシの顔が
形成されてゆく‥
『さっ、出来たワ♪
最っ高~にイイ女じゃない?』
チーフは今、完成させた
アタシと言う名の作品を
美術館の絵画を見るみたいに
満足気に眺めてる。
鏡に映るアタシはまるで
別人みたいになってた。
す、凄いよチーフ!
『さ・て・と‥。
予約のお客さんも居ないし
麗子ちゃん、先に一旦
家に帰って駅の並びの
Cafe´で待ってて。
お店閉めたら直ぐに
行くから♪』
お会計を済ませ、
開いた手の平を胸の辺りで
小さく振り、見送るチーフに
愛想笑いを浮かべながら
アタシは白い店のドアを
抜けた。