【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー


テーブルには主婦が好み
そうな献立やお掃除テク
なんかが載ってる雑誌が
置いてあった。

アシスタントがそれらを
纏めて下げ、ストリート系や
モード系のファッション雑誌と
取り替えようとした。

チーフが屈んだアシスタントの
陰になって見えない。

もどかしさの中、麗子が
上体を斜めに傾けて無理矢理
チーフを見ようとした。


再びアシスタントに
遮られる‥


イライライライライラ


『あーもお!邪魔!』

サングラスをむしり取り、
思わず声にしてアシスタントに
ぶつけてしまった!



その声は思った以上に
大きかった。


アシスタントの失敗か?と
その声に反応してチーフが
振り返った。


『れ、麗子ちゃん?!…
済みません、ちょっと
失礼致します。』


施術中のお客さんに
断ると、
チーフが彼女の元へ
駆け寄った。


『ちょっと!
なんで今時間ここに居るのよ‥
アンタまさか!ズル休み?』

『しーっ!
チーフ声が大きいってば!
しょうがないじゃない
この頭じゃ…チーフ、
何とかしてよ!』


そう言うとニット帽を
脱いで見せた。


そこには見事な寝起き
ヘアーが現れた。


『昨日、あれほど細かく
ブローの仕方教えて
あげたのに…。
あちらのお客さんが
終わったら直してあげるから
そこに座って待ってなさい。

だいたい、これから
銀行強盗でもするつもり?
ちょっと、両手で
フレミングの法則の指
やってみてよ。』


『…こう?』


『Yo!Yo!って
ラッパーみたいじゃないの!』


『・・・・・』


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