【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
奥さんこと、美津子さんは
お会計を済ませると、
自信に満ち溢れた輝きを放ち、
笑顔で店の白いドアを
後にした。
その背筋はピンと伸び、
足取りも軽く見えた。
チーフが本当にカリスマだ
って事を立証させた
一時だった。
『さ・て・と…。
あら、もうお昼ねぇ。
二日酔いは治まったの?
これからランチしに行かない?
…あっ!忘れてた。
その頭じゃ行けないわよね!
次は麗子ちゃんね。』
チーフは麗子を座席に
着かせるとライダース
ジャケットに合わせた
タイトな纏め髪を作って
行った。
『早っ!』
『そうよ♪何てったって
カリスマですからね♪
細かいセットの仕方は
あとでね!
ランチ行こ♪』
カリスマ…今日は認めるよ…
『ヤッター♪』
麗子が嬉しそうに飛び跳ねる。
『あの…チーフ、
さっき長谷川様と言う
お客様から5時にご予約の
お電話が…』
アシスタントがチーフに
声を掛けた。
『長谷川様って?
どちらの?』
『何か新規のお客様みたい
ですけど…。
長谷川瑞希様と仰って
ました。』
『み、瑞希?!
えっ!…ロスに居る筈じゃぁ…
…まさかね、同姓同名よね
きっと…。』
『チーフ、知り合い?』
『ん?まあね‥
でもたぶん違うと思うわ。
ランチ行きましょ♪』
麗子はチーフと共に
スキップしながら店を出た。