【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
独りノリツッコミしていた
彼女は結局、無難な路線の
ワンピースを選び、
コートを羽織ると再び
部屋を出た。
誰かと待ち合わせして
そこへ向かう時って
別に彼じゃなくても
何だかちょっぴり
ワクワクする。
駅前のCafe´に着く頃には
ムシャクシャした気持ちも
少しは快方に向かっていた。
アイツのことなんか
忘れてやるっ!
いや!忘れるんだ!
もう《彼》から《アイツ》に
格下げっ!
ガラス張りのCafe´の
自動ドアに踏み込む右足に
そんな思いを込めて
タン#と思い切りマットを
踏んだ。
自動ドアが開いた途端
暖かな空気が麗子を包み込む。
此処って意外とお洒落な
店なんだ♪
トロトロのボサノヴァが
流れる店内は、壁面を流れる
ライトアップされた水と
周囲を囲む緑がまるで
リゾート地に居るかの様で
麗子の気持ちを和ませる。
店内をクルリと眺めて
入り口付近にあった
ファッション雑誌を
持ち込んで窓際の席に座る‥
チーフはまだ来ていない様だ。
カフェモカをオーダーして
暫し麗子は雑誌を眺めていた。
『 お待たせ! 』
声に反応して顔を上げた
彼女はそのままゼンマイの
切れた人形みたいに
ポッカリ口を開けたまま
その場に固まってしまった。
『ち、チーフ???!』