【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
『だったらクビだ…。』
長谷川がサラリと言って
退ける‥
『はっ?』
コーディネーターは突然の
言葉が理解出来ず短く
聞き返した。
『全部撤収させろ。
センスも知恵も無い奴に
開店前から店を潰されては
たまらん!
国内進出第1号の店を
こんなチープで悪趣味な
内装にされては困るんだよ。
材料は向こう(海外)から
空輸させる。
もう用は無い失せろ…。』
『申し訳ありません、
ですが…』
『チャンスは二度無い。
失せろと言ったんだ!
失せろ!』
食い下がろうとする
コーディネーターを視界から
外すと、長谷川は既に携帯に
集中していた。
取り付く島も無い…
コーディネーターの女性は
わなわなと震え、唇を
噛み締めると涙が頬を
伝う前に踵を返し、その場から
急いで走り去った。
『…あぁ、そうだ。直ぐに
手配してくれ。
それから、そっちの優秀な
空間プロデューサーを
一人派遣してくれ。自社の
ジェットでだ。
母には知らせる必要は無い。
…あぁ、宜しく頼む。』
用件だけ伝え終え、携帯を
パタンと閉じるとスーツの
内ポケットに押し込み
『出掛けて来る。
今日中に全て剥がしておけ…』
それだけ現場担当に言い渡す
と足早に出て行った。
唖然としながら現場担当が
耳に掛けていたペンを無意識に
取ると、
『キッツイ人だなあ、
もう直ぐ完成だってのに
全部剥がせってか?
…やってられっか!』
もう完全に見えなくなった
長谷川を確認してから
被っていたキャップを乱暴に
むしり取り、床のビニール
シートに思い切り叩きつけた。