【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
『・・・チーフの…
チーフの理想の女(ひと)って
どんな人?やっぱり綺麗な人?
大人の女性?』
麗子のマジな表情に
チーフが手を止めて
『そうねぇ、具体的な
理想ってのは無いのよねぇ。
だって型にハメられるもんじゃ
無いでしょ?
強いて言うなら自分らしく
生きてる人かしら?』
手をヒラヒラさせながら
漠然とした答えを返して来た。
『年下と年上だったら
どっちがいい?』
更に麗子が突っ込む‥
『年齢は‥母親以上に
極端に上だったり、小学生
とか端から聞かれて犯罪扱い
されるほどの差で価値観も
合わなければ自然と対象からは
外れるわね。
って言うより先方から
相手にされないと思うわ。』
当たり障りの無い返答だ。
『じゃあ、じゃあ…
6つぐらい年下とかは?』
更に突っ込んで訊いてみた。
『そうねぇ‥アタシは‥』
チーフが返答しようとした時、
店のドアが開かれた。
『いらっしゃいませ。』
アシスタントの時田君が
来客に声を掛けた。
麗子が鏡越しに覗くと
アルマーニのスーツで洗練
された印象の男が入り口前に
立っていた。
『ほぅ…。
殺風景で、なかなか良い店
じゃないか…。』
いきなり毒を含んだ言葉を
吐く…
『久しぶりだな。
森嶋龍二・・・』