【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー



『ねぇ‥チーフ、アタシ
後片付け手伝うよ!
何をすr…』


『頼むよ!
独りになりたいんだ!

……………ごめん…。』


既にOFFモードのトニーに
戻ったチーフに言葉半ばで
強く拒絶され、麗子が僅かに
身を縮めた。


『…ごめん。モデル俺から
頼んだのにな。
ちょっと独りで考えたい事が
あるんだ…。

また暇な時にでも練習手伝って
くれるかな?』


穏やかな声でトニーが言う‥


『そ‥そんな時もあるよね!
もちろん!

いつでも練習したくなったら
言って!

チーフ、また来るから‥』


何も事情を知らない麗子に
とって、『元気出してね!』
なんて軽々しい励ましの言葉は
今は逆効果な気がして
言葉にする事はできなかった。
ここは大人しく素直に帰る
道を選ぶしか無い。


麗子にだって空気のひとつや
ふたつ位は読めるのだ。


極力、いつもの調子で明るく
手を振り店を後にした。


‥‥‥が!


空気の流れで出て来たのは
良いが、暫くしてアパートに
近付いた辺りでカバンの重量が
何だか軽い事に気が付いた。


『あっちゃあ~』


どうやら店に携帯を置いて来た
らしい。


『今更、戻れる雰囲気じゃ
ないよなぁ‥

あ~ぁ、冴子に電話しようと
思ったのに‥』



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