【Transformation of Tony】トランスフォーメーション・オブ・トニー
『さーてと!
カリスマ美容師の
プライベート初公開も
終わったし、行こうか!』
ニッと微笑み立ち上がる。
じ、自分で言っちゃってるよ‥
カリスマって!
慌てて我に還った麗子も
立ち上がる。
いきなりチーフがロダンの
考える人みたいなポーズで
上から下まで立ち上がった
麗子に目線を走らせる‥
へ、変なの?
アタシ、変?
ネイキッド(裸)な
自分を見透かされてる様な
イタイ視線に麗子が身を
縮めた。
『あっ!ゴメン、ゴメン。
職業病だから‥(笑)』
そう言うと会計伝票を
拾い上げ、チーフがスタスタ
入り口の方へ歩いて行く。
歩く度に腰周りのチェーンが
シャリンシャリンと
音を立てて店内に響く。
その後を距離を置いて
麗子が行く。
チーフ、カッコイイんだよ‥
でもね、でもね、
それを上回って
外では恥ずかしいんですけど!
その派手な火吹きシャツっ!
オプションでスエードの
ジャケットにフリンジ
付いてるし‥
エルヴィスかっ!
チーフがマネークリップに
挟めてる千円札をシュッと
抜いてレジの女の子に
伝票と共に差し出す‥
『君、可愛いねー♪
あのさ、
今度俺のカットモデル
やらない?
あっ、お釣り要らない。
お店、すぐそこなんだけどさ、
今度、絶対?
待ってるからね、
絶対だよ!
んじゃ♪またね~♪』
軽いっ!
軽すぎる!
別にカレシじゃないから
いいんだケド‥
ちょっと
イラッと来る!