愛の手
視界にとらえたのは、優しい笑顔で見下ろす男。
髪は全てうしろへ流し、垂れ目気味の瞳が少しだけ安心感を与えさせてくれた。
きっちりと着こなしているスーツで、行儀よく正座。
見下ろしているのは、あたしが寝転んでいるから……みたい。
自由のきく首を動かすと、あたしの上にはふわふわの布団がかけられていることに気づいた。
和室?
ふすま、畳の香り、これぞ日本家屋!!って感じの造りだ。
男はあたしのオデコに手をあてた。
「熱がまだありますね。もう少し横になっていてください」
オデコにかかった前髪を梳くようになでる手が、痛みを緩和させてくれるみたいに心地よかった。
「あ、の…」
よかった。
唇も動くみたい。
男は優しい笑顔のまま、小首をかしげた。
「あなたが、助けてくれたの?」