愛の手
「ふぅーん」
「なによ」
あからさまに機嫌が悪そうな礼央。
舐めるように康平さんを隅々まで見た。
「お前の新しい家族って、こんな若くてイイ男だったわけだ?」
……はぁ?
あたしはきょとんと目を開けたまま、わけのわかんない礼央を睨んだ。
「べつにイイじゃん。たまたま引きとられた家なんだし」
「だからうちくればよかったのによ」
「絶対イヤ!! あんたと一つ屋根の下だなんて、考えただけでも虫ずが走る!!!」
「はぁ? ヒドイいいようだな」
モテモテの礼央の家族になった、なんて学校で噂された日には……
――…女子の嫉妬という名のイジメが…っっ!!!!
「とにかくイヤ!! あたしには康平さんたち家族がいるんだから!!!!」
……あっ。
いったあとで後悔してももう遅い。
知らん顔してた康平さんが、目を輝かせてコーヒーを机にこぼした。