愛の手
求める手。
学校ではいつものように、誰とも喋ることはない。
噂話は収まってきたものの、ヤクザパワーは強い。
誰も話そうとしないし、誰も悪口はいわない。
……家のことにかんしては、ね。
「ねぇ、知ってる? あの小原とかいう女」
ビクッ
あたしは肩を大きくゆらした。
いまはトイレの個室。
聴こえた声は、手洗い場にたまってる数人の女子みたい。
「知ってる知ってる!! 礼央クンにつきまとってる女でしょ」
つきまとってる?
「礼央クンはみんなの!!って決まってるのに。なんでアイツだけ抜け駆けしてんの!?って感じ!!」
いつ礼央はみんなのモノになったのよ。
「ウザイよね、礼央クン独り占めしてさ」
べつに独り占めしてるつもりはないのに……