愛の手

総司さんのツラそうな顔が忘れられない。


それなのにあたしに優しくしてくれた、あったかい手。

慰めるように抱きしめてくれた総司さんは、寂しそうだった。



優しくしてくれたその手に甘えて、あたしはまた罵倒したんだ。

殴られてもなにもいわない総司さん。


あたしの全てをうけとめてくれた。




でも――…

ダイキライ、といったあと、総司さんの瞳に感情がなくなった。

あたしはいまでもあのときのコトを後悔してる。


ちゃんといえばよかった、って。





「わかった」

そういった総司さんの声は冷たくて、




「好きにすればいい」

あたしから離れていった。


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