愛の手
寂しい心、許しの手。
あれからまもなく、ヤクザ屋敷を出ていく日になった。
とりあえず礼央の家に引きとられることとなったあたしは、自分の荷物を抱えた。
「お嬢、ちゃんとメシ食えよ!?」
「人並み程度にならね」
「お元気で」
「仁さんもね」
「うぅーっ、い、いつでも帰ってきてくださいね」
「与一さん……ありがと。怪我ちゃんと治してね?」
あたしがお世話になった組員たちは、全員門まで見送ってくれた。
ほとんどが怪我も治ってて、ちょっと前の包帯集団とは違っていた。
せめて全員が完治するの……見届けたかったな。
総司さんの姿はナイ。
イヤだったはずのヤクザ屋敷を出るっていうのに、なんだか心の引っかかりがある。
モヤモヤして、気色悪い。
「いきましょうか、愛理さん」
「……うん」
祐輔さんに連れられながら、あたしはヤクザ屋敷――…浅葱組に背を向けた。
「いってらっしゃい、お嬢!!!」
腰を直角九十度に折り曲げた組員たちは、いつまでも白いゼロクラウンを見送ってくれた。