愛の手
白いゼロクラウン。
総司さんがあたしのために買ってくれた、っていう特別な車。
それとも今日でお別れ、か。
「ねぇ、祐輔さん」
「どうしましたか」
運転してる祐輔さんは、チラッとうしろのあたしを見た。
「ちょっとだけドライブしたいな」
今日でお別れだと思うと、急に寂しくなってきた。
傷だらけにして、あたしから全てを奪って、あたしに優しさをくれた悪魔。
あんなにイヤなヤクザだったのに――…
いつのまにか許してた自分がいた。
気づいてしまったからだ。
傷つけて全てを奪ったことよりも、与えてくれたモノのほうがはるかに大きかったコトに。
だから――…
「少し、海にでもいきますか」
祐輔さんの提案が、心の底から嬉しかった。