愛の手

――…


ヤクザ屋敷に着いたあたしたちは、状況把握の出来てない組員たちにかこまれながら廊下を歩いた。

なんで戻ってきたの?っていいたそう……



「持ち場に戻れ」

「へ、へいっ」

総司さんの一喝で、物珍しそうに見てた人の壁が、一気に散らばった。

……鶴の一声、ってヤツ?






総司さんの部屋にまねかれたあたしは、居心地悪く入口で正座をした。

そばにおいで、って言葉に、めずらしく反抗してしまった。


だって、総司さんのお香の匂いが部屋中にただよってて……ドキドキがとまらない。




「かたくなるなって」

「……でも」

「俺はなにがあっても、お前の味方だ」

「……はい」

あたしは素直に、言葉をうけ入れた。

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