愛の手
そばによると緊張しちゃうから、あたしは頑として入口から動かなかった。
顔が赤くなってるのに、気づかれたくない。
さて、といいながら総司さんは少し離れた場所に腰をおろした。
よかった……
これくらいならバレないよね?
「なにから話そうか」
緊張をほぐそうとしてるのか、総司さんの声はあかるかった。
「……あたしの両親がお金借りたのは、浅葱組じゃないって聞きました」
「聞いたのか」
「……はい」
総司さんはやはり、どこか余裕のある態度だった。
ヤクザの親玉だからなのかな。
見た目なんて全然ヤクザっぽくないのにね。
「両親が借りてたのは、矢崎組ってとこだ」
祐輔さんのいってた通り、総司さんたちじゃない。
じゃあ、なんであたしはココにいるの?