愛の手

そばによると緊張しちゃうから、あたしは頑として入口から動かなかった。

顔が赤くなってるのに、気づかれたくない。


さて、といいながら総司さんは少し離れた場所に腰をおろした。



よかった……

これくらいならバレないよね?




「なにから話そうか」

緊張をほぐそうとしてるのか、総司さんの声はあかるかった。


「……あたしの両親がお金借りたのは、浅葱組じゃないって聞きました」

「聞いたのか」

「……はい」

総司さんはやはり、どこか余裕のある態度だった。


ヤクザの親玉だからなのかな。

見た目なんて全然ヤクザっぽくないのにね。



「両親が借りてたのは、矢崎組ってとこだ」


祐輔さんのいってた通り、総司さんたちじゃない。




じゃあ、なんであたしはココにいるの?

< 209 / 285 >

この作品をシェア

pagetop