愛の手

総司さんはタバコを我慢してるみたいで、口元を指先で触ってる。

吸ってもイイよ、っていってるのに、部屋に匂いがこもっちゃうから吸わないんだって。


あたしのコト、気にしなくていいのに。




「その矢崎組ってなんですか?」

きいたことのナイ組の名前。

あたしを追ってきて、殴った人たち。


恐怖を与えて、なにもかもを奪った。






――…ダイキライな人たち。






総司さんは、小さく息をついた。



「矢崎組は、お前の実家だ」




いつもの優しい声でいった言葉は、残酷な言葉だった。

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