愛の手
「実家……?」
あたしの言葉に、短くあぁ、と答えた。
あたしの両親は亡くなった。
だから実家なんて、あたしには存在しない。
居場所なんて、もうなにも残ってないんだから。
「あたしに、実家なんてありません」
そう告げるのに、少し勇気がいった。
自分は一人なんだ、って、あらためて実感するから。
「きなさい」
「……」
命令する言葉なのに、いつも優しい声。
戸惑いながら手をモジモジとさせてると、総司さんはふっと笑った。
「おいで、愛理」
優しく、あやすような口調。
その声に、あたしは
「はい」
としかいえなくなっていた。