愛の手

総司さんの腕の中は、あいかわらずあったかかった。

背中から抱きしめるようにまわされた腕に、あたしも手を重ねた。


背中越しに、ちょっと速めの、総司さんの鼓動が聴こえる。

「お前は親戚がいない、っていってただろう」


いないよ、親戚なんて。

両親が結婚するとき、大反対されて勘当されたんだから。


「いくら勘当されても、親戚は生きてるってコトなんだ」


それはそうなんだけど……




「……信じらんないですよ」

総司さんがウソをつかない人、ってわかってる。

いつだってあたしのことを考えてくれてるのも、知ってるよ。


でもこればっかりは信じられない。



あたしを傷つけたのは……血を分けた、あたしの親戚?



いつのまにか震えていた体を、総司さんは強く、折れそうなほど強く、抱きしめた。

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