愛の手

頭の中がグルグルしてるのがわかったのか、総司さんは優しく頭をなでてくれた。

髪を梳くようになでる大きな手。


あたしのスキな、あったかい手。



「実家だとしても……あたしはいらない子、ってことですよね」

借金が返せなくて、いっぱい殴られた。

男の人がアパートまで来て、何度もドアを強く叩いた。


近所迷惑だ、って管理人さんにも怒られた。




だからあたしは現実が怖くなって、逃げたんだ。


「あたし…っ、んで産まれてきたんだろう……っ」



弱い心が、音をたてて崩壊した。

強がりをいえない弱虫な心。




心配させたくないのに、あたしは……


――…また逃げようとしている。

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