愛の手

昔面倒を見たといったら、一人しかいない。

イジメられっこのあたしは、その一人にしか懐かなかった。


ダイスキな、ダイスキな、あたしの初恋の人――…




「…お兄、ちゃん…っ?」

「ん?」


ウソでしょ……?

あの初恋のお兄ちゃんが、総司さん!?


祐輔さんがそうだと思ってたぶん、驚きがハンパなくて……っ!!!



「だってお兄ちゃんは優しかったよ!?」

なんて、失礼きわまりないコトを口走ってた。


「いまも優しいだろうが」

ちょっと不機嫌そうな声。

優しいんだけど、あのときみたいに無条件の優しさじゃない。

ヤクザ様のオーラがただよってるからかな。



「家のことでうまくいってなかったとき、俺を頼ってきたのはお前だけだった」

「……ご両親のこと?」


曖昧な笑みを浮かべながら、あぁ、と小さな声で肯定した。

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