愛の手
「俺は両親が大嫌いだった。だから家にいたくなくて、いつも外をフラついてた。なにをするでもなく、ただ歩くだけ」
だから泣いてるあたしに遭遇したんだ。
いつもタイミングよく、あらわれてくれたもんね。
「泣きながら俺にしがみついてくるお前は、俺を……俺だけを必要としてくれた。
浅葱組じゃなく、この俺を」
そうだよ……
あたしが出逢ったのは、お兄ちゃん。
泣いてるあたしをいつも慰めてくれる、優しい総司さんだよ。
「俺を求める愛理が、いつしか必要不可欠な存在になっていた」
優しい口調で、子供をあやすようにあたしに語る。
幼い記憶をたどっても、あたしにとっても、総司さんが必要不可欠な存在だよ。
「俺を求める手、俺だけを頼る小さな子。愛しくて、しかたがなかった」
「総司、さ…っ」
あたしだってそうだよ、っていいたいのに……
――…ドキドキして、言葉が出なかった。