愛の手

だからあたしの前から、急にいなくなったんだね。

あたしはすっごく、寂しかったよ。




でもお兄ちゃんがいなくなったから、あたしは強くなろうって思ったんだよ。





「浅葱組のコトが落ち着いてしばらくして、お前の噂が耳に入った」


あたしの両親が失踪したこと。

借金を抱えて、苦しんでいるってこと。



ヤクザの情報網ってすごいね、って思うくらい、総司さんにはなんでもお見通しだった。


「悪かったな」

「総司さんは、なにも悪いことしてないですよ?」

いや、と首を横にふると、ぎゅっと体を抱きしめた。


「俺がもっと早くにお前を買っていれば、あんな目に遭うことはなかった」

「……そ、んな……っ」

総司さんはあたしを助けるために、あたしを買ってくれたんだ。

借金に追われるあたしを、矢崎組から救うために。



八千万という、大金で――…

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