愛の手
「もしかして……この怪我……」
総司さんは首をかしげた。
他の組と取り引きをしたといって、組員全員が怪我を負った。
その取り引きって、まさか――…
「矢崎組と、……取り引きしたんですか?」
あたしのために。
あたしを借金から自由にするために。
だからみんな、抵抗もせずに矢崎組の思うままにさせたんだ。
怪我をしてまで……
総司さんは、あー、といいながら視線をそらした。
やっぱりそうなんだ。
曖昧にごまかそうとするその態度が、すでに肯定していた。
「バッカじゃないの!!?」
「あ、愛理…っ?」
「なんであたしなんかのために、怪我なんてするの!!?」
本当、バカだよ。
バカ、バカ、バカ!!!!
でも――…
本当にバカなのは、その優しさに気づかなかったあたしかもしれない。