愛の手
暗闇の手。
エンジンの音が低くあたりに響く。
朝食を食べ終わったあたしは、急いで制服に着替えて階段をかけおりた。
「お嬢、今日は寝坊しませんでしたね」
「いつもじゃないもんっ」
「ははは、祐輔に怒られますよ」
「いってらっしゃい、お嬢」
「いってきます」
玄関を出ると、そこには門に横づけされた白いゼロクラウン。
あたしのために買ってくれたせいか、すごく愛着のある車。
後部座席のドアの前で、祐輔さんが待ち構えていた。
「今日は間に合いますね」
なんてイヤミも、さらりと笑顔でいう。
「いつも遅刻してるわけじゃないもん」
「そうでしたっけ?」
とぼける祐輔さんは、後部座席を開けてくれた。