愛の手
驚いたってモンじゃない。
本当に心臓が飛び出るかと思った。
だって学校に入学してから半年、誰とも話したことがなかったからだ。
ましてや女の子となんて……っ!!
「な、なに…?」
あたしはビクビクしながら、隣をふり返った。
声の主は、あたしを見ておなじくビクビクしてる。
……なんでお互い怯えてるんだろ。
「小原さんって……、お嬢様、なの?」
お嬢様?
いやいや、そんなキレイなモノじゃないけど。
「朝、すごくカッコイイ人といたでしょ? 執事さんだって噂になってるよ」
「……執事、ねぇ」
いいかたを変えれば、祐輔さんは執事みたいなモノなのかな。
いつも一緒だし、世話役だし。
だからあたしは考えなしに
「執事みたいなモノ、かな」
って答えてた。