愛の手
「七代目は、愛情を知らないから」
「愛情?」
そう、っていいながら、礼央は頭をかいた。
ちょっと考えてるときのクセだ。
「こんな家柄だからさ、厳しい人だったみたいだぜ、愛理のじいさん」
……まぁ、長年、組長なんてやってりゃ威厳もあるだろうね。
怖そう。
「愛情をもらったことがないから、愛情表現がヘタなんだよ、七代目は」
普通のことが、普通に出来ない。
愛情が曲がってしまって、手が出るんだ、と礼央はいった。
「やりかたはどうであれ、七代目は家族がいて本当は嬉しいんだよ」
あたしを殴っておいて、なにをいうの。
死を間近に感じさせといて、なにが家族、よ。
あたしにはもう、家族なんていらない。
ううん。
浅葱組のみんなが家族。
「……あたしは、浅葱組の人間よ」
あたしの口は自然とそういっていた。
礼央は驚いたように目を見開いた。
「血を分けた親戚より、赤の他人をとるの?」
血を分けたとしても、あたしにとっては非道なヤツだ。
赤の他人だとしても、とても優しい手をしてる。
あたしは迷わずうなずいた。