愛の手
あたしは走った。
本当は走れてないのかもしれない。
体中に痛みがあって、痺れたように自由のきかない体。
でもあたしは最速で走った。
気持ちが急いて、もっとはやく、はやく、って足を進めた。
矢崎組は、総司さんたちの屋敷より狭いみたい。
玄関で靴を履くと、誰もいない屋敷から逃げるように出た。
あたしは総司さんのとこに帰りたいの。
あたしの居場所は、総司さんのとこだけなんだから。
「愛理っ!!」
総司……さん?
あたしを呼ぶ声は、怪我してるはずの総司さんの声。
なんできちゃうのよ、バカ。
怪我のことも気にせず、こんなあたしを迎えにきちゃうんだね。
優しすぎるよ。
門を出た先にいたのは、ド派手なフェラーリ様から飛び出したばかりの、総司さん。
「そぉ、じ……さん…っ!!!」
視界がゆれた。
あたしは走ったいきおいのまま、総司さんの胸に飛びこんだ。