愛の手
「傷、痛むか?」
「ううん、大丈夫です」
フェラーリ様を運転しながら、総司さんが頬に手を添えてきた。
殴られたとこがピリッと痛むけど、心配かけなくて顔に力を入れた。
「ムリするな」
なんで総司さんにはすぐバレちゃうんだろう。
あたしの心を見透かすように、総司さんは頬を優しくなでた。
「矢崎組に、なんていわれた」
ビクッ
肩がゆれた。
いまは聞きたくなかった名前なのに、総司さんは後回しになんてさせてくれない。
「……大丈夫だ、俺がそばにいる」
言葉につまるあたしをなだめるように、総司さんは何度も、大丈夫、と唱えてくれた。
その声が低くて、優しくて、甘い声だった。