愛の手

「そうだ愛理。もう一人、紹介するヤツがいる」

「紹介?」

出てこい、って声に、門からあらわれたのは男。

……ヤクザ屋敷はやっぱり男ばっかりだ。



「あれ、周防さん、だっけ?」

一度だけ見た顔。


あたしが浅葱組に入ることを反発して、謹慎中だった人。

周防さんは大きな図体であたしのそばまで近づく。


こ、怖い……



ガバッ、といきおいつけてヒザをつくと、周防さんは頭を地にこすりつけるように下げた。


「このたびは、申しわけありませんでした、お嬢様」

「……へっ!? あたしなんかされたっけ!!?」


祐輔さんも、康平さんも、なんだか申しわけなさそうな顔をしてる。


ってか浅葱組の人に、あたしなにもされてないのに、次々に謝られるなんて……

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