愛の手
なでる手がすごく安心する。
あたしは甘えるように総司さんの胸にすりよった。
総司さんは、拒絶することなくあたしをうけとめる。
だからかな。
あたしは総司さんの腕の中なら、素直になれる。
ツバを飲みこむと、あたしはゆっくり総司さんを見上げた。
きっと総司さんなら、あたしを守ってくれるから。
「矢崎組に、後継者はお前だっていわれました」
総司さんの手が、一瞬とまった。
動揺したのか、胸の音も少しだけはやまっていた。
隠し事はしたくない。
だからあたしは、総司さんにだけは素直になりたい。
「矢崎組にいろ、っていわれました」
総司さんの鼓動を身近に聴きながら、あたしは歌をうたうようにゆっくりと口にした。