愛の手
「なぁ、愛理」
「はい」
「浅葱の、……俺のそばにいてくれるか?」
あらためて聞くのはなんでかな。
自信なさげな声が、総司さんらしくなかった。
でもやっぱり野獣っぽいオーラは、ヤクザ独特だよなぁ。
あたしはこくん、とうなずいた。
無条件であたしを家族として迎えてくれる浅葱組。
これ以上の家族が、どこにいるっていうの?
「あたしは浅葱組だからこそ、ここにいたいんです」
再び強くいい放つと、総司さんは力強くうなずいた。
「もう二度と、矢崎組には手出しさせねぇ」
「……怪我、しないでくださいね」
「愛理が傷つくのは見てられない」
あたしの頬をなでる。
傷を見るのがツラいのは、あたしも一緒なんだよ。
あたしは心配かけたくなくて、笑いながら
「傷が残ったら、責任とってくださいね」
っていった。
総司さんは口の端を吊り上げて、
「そのつもりだ」
って答えてくれた。
それがなんだか、心をあったかくさせた。