愛の手

あなたの手。


――…キーン、コーン、カーン、コーン


あたりに授業終了の合図が響いた。


あたしはいま、幸せの絶頂にいる。



「愛理ちゃん、お昼一緒に食べない?」

隣の席の子、春香(はるか)ちゃんが、よくお昼に誘ってくれるからだ。

あたしは毎日のように春香ちゃんとお昼を食べてる。


席が隣だし、行動をともにしやすいのもあるかもしれない。



なによりあたしのことを、好奇の目で見ない。

“お嬢様”なんて思われても、普通の友達として接してくれるんだ。



女の子にも、こんなイイコがいるなんて……



「ごめん、今日はちょっと用事があるんだ」

「そうなんだ、残念。いってらっしゃーい」



そう……

あたしは今日は、用事があるんだ。



ごめんね、春香ちゃん。

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