愛の手
あたしは震える体を押さえようと、強く肩を抱きしめた。
痛みが、恐怖が、あたしの脳裏に焼きついてる。
逃げても逃げても黒いスーツの男が追ってきて、見つけるとともにあたしを殴る。
視界がぼやけて、抵抗する気力がない。
あたしに残された手段は一つ。
最後まで諦めない、ただそれだけ。
ふわりと、甘いお香の匂いが香る。
恐怖のどん底に陥れた張本人が、あたしを抱きしめた。
「離して…くだ、さい」
消えそうな声で抵抗する。
総司さんは黙って抱きしめる力を強めた。
苦しいって思うくらい、強く。