片思いの種
「葵!一緒に帰るか?」


優しい南の声が後ろから響いた。


振り返って笑顔で答えるあたし。


この笑顔に偽りなんてない。


南の横で、南の横顔を見ながら歩いていた。


「今日の理科ウケたよな!あの失敗!」


「あ!うんうん。あたしも止まんなくって!」


ただ、盛り上がっていた。


これから何がおきるかも考えずに。


「俺今日送れないんだった。ゴメン!明日な。」


手を振り合い、見送る。


あたし1人。とぼとぼ歩きながら考えていた。


どうして、海翔なんか好きになったんだろう。


どうして、あんな恋をしたのだろう。


そもそも、あれは恋だったのだろうか。






「え!?マジで?俺関係なくね?」


「そんな事ねえべ。」


5人くらいの男子の大群。


あたしは群がってる男子を避けて道路に出た。


反対側の歩道に移る。


あー最悪だ。


と思って石を蹴りながら下を向いて歩いていた。


・・・・ふと横を見てみる。


「俺じゃねえってば!」


聞き覚えのある声。


そう、海翔だった。


見た瞬間に、鼓動が早くなって・・・。


すぐに気づいた。


「海翔が好きだ。」


心変わりなんかじゃない。


南への気持ちは恋じゃない。


こんなに苦しく愛しい気持ちになれなかった。


あたしはただ、楽に恋をしたかっただけ。


逃げてただけ。


こんなにも海翔が好きなのに!


大好きなのに!


南と抱き合った。


南とキスをした。


・・・・こんなあたしが海翔を好きになる資格ないって分かってる。


でも好き。


涙も止まらない。


南に申し訳ない気持ち。


自分を見失って親友も失った悲しみ。。


そして、誰にも譲れない海翔への気持ち。


なんでこんなコトをしてしまったのだろう。


海翔の後ろ姿をじっと、ずっと見つめる。


もう、ゆらがない。


大好きなのは、あなただけ。


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