[短編]「I can't」
「あの、もう一度…名前聞いてもいいですか?」


「だから…桜井…樹音だけど?」


「桜井さん…」


樹音は“やっぱりおかしい!!”と思った。


“さん”付けで呼ばれたことなんかない。いつも樹音って呼び捨てだった。


これは避けられてる感じではない…


「ほんとに覚えてないの…?何かあったの?」


…この質問に、彰人は答えなかった。


その代わりに
「僕について来てください」と言って、来た道を戻りだした。

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