[短編]「I can't」
「彰人、おかえり。…あら?」


玄関に入ると、奥の方からひとりの女性がパタパタとスリッパを鳴らして出てきた。


…きれい。


毛先までキチンとブローされた髪に、色白の肌。


薄く茶色の瞳が彰人とそっくりだ。

そして、すごく落ち着いた雰囲気。


「あのっ!桜井樹音です!」


「桜井さん?」


「はい!」


「彰人の母です。どうぞ、遠慮なく上がってくださいね」



…彰人のお母さん!?


あまりに美しくて、樹音は言葉を失った。


…突然、彰人の家に来て、
お姉さんみたいなお母さんに会って。


なんて1日…

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