[短編]「I can't」
「彰人、まだ話してなかったの?」


母の問いかけに、彰人は小さく頷いた。

湯気の出るココアをフーフーする姿、それはまるで子供のよう。


母が優しく息子を見つめる瞳は、どこか寂しさを帯びている。


「彰人ね、二年前…やっと高校生活に慣れた頃、事故にあったのよ」


「事故…ですか?」


「えぇ、交通事故よ。信号無視した車に跳ねられたの」


「それでどうなったんですか!?」


「怪我は、腕の骨折とすり傷があったけれど…病院で目を覚ましたこの子には…記憶がなかったの」

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