[短編]「I can't」
「だから、あたしのことも覚えてなかったんですね…」


「でも、こうしてあなたを家に連れて来たのは、何か思うところがあったのかもしれないわ」


彰人は飽きてしまったのか、先ほどからテレビゲームで遊んでいる。


「あの子、心が子供に戻ってしまったみたいで…高校も辞めてこの二年近く、ずっと家にこもっていたの…」


「……」


彰人の母は涙で声を詰まらせた。


今の彰人は、樹音が知っている彰人ではない。


あんなに大好きだったのに、
事実を知ってしまった今は、
一番遠い存在に思えた。

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