罰ゲーム
「今日は本読まねぇの?」
相変わらず画面に視線を向けたまま彼は言った。
『うーん。この前借りた本、家に置いてきちゃったんで』
「ふーん。じゃあゲーム機持ってきてる?」
『あ、それは持ってきました!』
遠藤先輩に会ってから、お兄ちゃんのゲーム機をなんとか譲ってもらい、たまにはここに持ってくるようにしている。
「じゃあ久々にやろうよ」
『いいですけど…、先輩強いじゃないですか』
これまでかれこれ私が勝てのは、先輩がよそ見してたときくらいだ。
「大丈夫、大丈夫」
先輩はそう言って笑いながら対戦の準備をしている。
ふてくされながらも、内心喜びつつ、操作が簡単な格闘ゲームを始まった。
けれど予想外の展開。
決め技のコンボが入り、あっさりと私が勝った。
『やったぁ勝ったーっ!』
とりあえず素直に喜ぶと、
「くっそーっ。もう一回っ!!!」
第2ラウンドが始まる。
そして次も私が勝った。
その次も、だ。
『先輩こんな弱かったでしたっけ?腕落ちました?』
あまりにも不自然な結果に、違和感を感じた。
「佐伯が強くなったんじゃねーの?」
『そんなことないと思うんですけど…』
そして突然佐恭はこんなことを言い出した。
「んー、じゃあ次オレが勝ったら、お前罰ゲームな」
『はぁ!?』
「だって今日の佐伯強いし、ちょっとくらいそうゆーのあったほうが盛り上がるだろ」
確かに今日の私はなんでか絶好調だ。
『でもなぁ…』
「お前が勝ったらオレが罰ゲームすっから。な?」
なんでそこまで罰ゲームにこだわるのか謎だが、今日は勝つ自信がないわけではない。
受けて立つか。
『わかりました』
「よし!じゃー絶対だかんな」
《3…、2…、1…、GO!!!》
試合開始の電子音が響いた。