エースナンバー
「…そのことか」
美空の口が…小さく動く。
「…昨日は、ごめんね…殴って」
「別に…痛くないし」
本当は、なかなか腫れが引かなくてどうしようかと思ったけどな…
女に殴られたなんて洒落になんねぇよ
「麻生くんの、言う通りだよ…」
"私は…女"
美空の視線が、まっすぐ俺に向いた。
「…っなんで?」
グッと拳を握る。
「野球が…好きだから」
――…!
「そんなの、性別偽らなくても出来るだろ?!」
俺が声をあらげても、美空は表情一つ変えなかった。
「意味ないんだ」
「……え」
「男になって…野球しなきゃ意味がない…」
美空の視線が足元に落ちる。
男じゃなきゃ…意味がない…?
「何だよ…それ」
「麻生くん…」
「ちゃんと、話せよ」